岸田新総裁、爆誕

日本中が注目した自民党総裁選挙も、岸田文雄の勝利で幕を閉じた。

 

昨年の安倍晋三の総理辞任を受け行われた総裁選よりも、今年の方が選挙前から大きく取り上げられ毎日その話題で持ちきりだった。

 

岸田が総裁に選出されたことは、意外といえば意外であるし、納得できるといえば納得できる。

主にメディアやインターネットでは河野太郎高市早苗が大きく取り上げられていたから、どちらが勝つかといった方向でしか世論は見ていなかったと思う。

しかし、河野も高市も言ってしまえば腫れ物に触るようなもので扱いにくいとも考えられるので、一番無難な人が選出されてしまったという見方ができなくもない。

 

これほど注目された二人であったが、ネット上における高市のカルト的支持と、河野への激しいバッシングは非常に印象に残るものだった。

 

河野はTwitterの利用や大臣として人気を集め、昨年の総裁選でも支持する声が多かったように思えるが、今年は昨年と比べ明らかに批判的な声の方が大きかった。

それは、ネットの保守層による圧倒的な高市への支持が目立ち、高市ヨイショが大盛り上がりしたことから始まった。

 

河野と高市それぞれ政策や思想に大きな違いが見られ、女系天皇の容認や夫婦別姓の容認、靖国参拝など、対極にあるとも言える。

 

いわゆるゴリゴリの右派と捉えられる高市はまさにネトウヨたちのアイドルとされ、Twitter上ではさまざまなハッシュタグも作られ、どのSNSでも高市一色だったのが、都知事選の際の桜井誠を彷彿とさせた。

 

Twitterやヤフーニュース、YouTubeにおいて総裁に誰が相応しいと思うかアンケートがよく取られたが、どのサイトでも高市が圧倒的に人気を集め、これが世論だと言う人も多かった(とはいえこれはネット上での高市支持者が極端に集中したせいとも思えなくない)。

 

そして一方河野は以前までネット上でも一定の人気を得ていたにも関わらず、総裁選出馬において急に脱原発を謳うのを辞めたり、文春にパワハラ問題をすっぱ抜かれたり、最終的には身内が中国企業とズブズブだと言われ始め、あいつは親中派の左翼で売国奴だというレッテルがベタベタ貼られる始末となった。

 

そのため嫌中派ネトウヨによって日本の敵だと言わんばかりにバッシングが加速し、あっという間に「総裁選における悪役」に仕立て上げられた。

 

これが高市の目に止まったのか、高市本人も「自分の支持層による他の候補者への誹謗中傷はやめるように」と声をあげたことに驚かされた。

 

それに加え、河野優勢と報じたり、逆に高市をあまり取り上げないオールドメディアに対しては相変わらずマスゴミだとか反日メディアだという声も止まない。いつの時もマスメディアはこうしたユーザーからの敵となっている。

 

別に私自身は高市が嫌いなわけでも、河野を全面的に支持するわけでもないが、こうした「高市は正義、河野は悪」といった構図が出来上がり、しかもそれを肯定することが日本国民が国民たるための鉄則とされていることが非常に疑問に思う。

 

安倍政権時から、保守思想を持つことが日本国民である証拠と言わんばかりに、政府に対して否定的な意見を持てばやれ反日だの非国民だの言われ、野党議員や反自民派の有権者は韓国人や中国人じゃないかと日本人であることさえ否定されてしまっている。

 

しかも一番厄介なのが、「愛国心」=「右翼、国粋主義」とごっちゃにされてしまっている。それゆえ、国を愛している者として、日本人として、そういった保守系のスタンスでいることが正しいこと。またそれが日本人としてのアイデンティティになりうると考えてしまう人が多いのではないかと考えざるを得ない点である。

 

要は「ネトウヨになる=日本人としての市民権獲得」と盲目的に捉えたり、またネトウヨである自覚がないが、自民党・保守思想の支持でいた方がいいだろうと考えたりするネットユーザーが多いのではないかと言いたい。

 

そのことが今回の総裁選でもネット上で浮き彫りになり、「高市に支持が集まっているし、高市も非常に保守的だ。だから高市を応援しよう」「河野は保守層から見て敵だ。しかもボロも出てきた。だから河野を叩こう」といった形で高市絶対主義、河野袋叩きが可視化された。

 

今日の開票で河野と岸田の決選投票となった際も、高市側は岸田サイドについたことで、ますます河野を落とせと言わんばかりに岸田を妥協点とする姿勢となった。そして岸田が選ばれたことで、高市支持派は口を揃え「最悪の事態を免れた」と言う。

 

高市が総裁になればますます日本は大っ嫌いな中国韓国へ強硬姿勢を見せられ、明るい未来が待っているだろう。河野が総裁になってしまうと中国に乗っ取られ、日本の未来が危うい」といった具合で、そこまでくると熱狂的な野党支持層や左派の人間と言ってることは大して変わりないレベルになってくる。

 

私自身もどちらかと言えば保守寄りのスタンスを取るが、こうした一方的な視点から物事を見た上に反対の立場の人間を目の敵にすることが疑問でしかない。

何事も穏健に、よく吟味して考えることが大切である。

 

蛇足だが、野田聖子はなぜ出馬したのか未だによく分からない。